「おかえり。オレとお揃いじゃん、似合ってる似合ってる」
作業を終え、情報チームのメインルームに帰ってきた年下の先輩の頭には、小さな桜の飾りの付いた美しいかんざしが乗っていました。
彼の頭の上のものと、自分の頭の上にもある同じものを交互に指差し、アランは彼に笑ってみせます。
お揃いという言い方に引っかかったのか、それとも似合っていると褒められたからか、ジーニーは少し恥ずかしげに視線を泳がせました。
「綺麗なギフトだとは思う。桜の木も、花が咲くとあんなに美しいのに……」
そう言いながら、ジーニーはたった今通ってきた背後の扉を振り返りました。
2人にこのかんざしを与えた主は、扉をくぐった先にある暗い部屋で、開きかけのまばらな花を揺らしながら、次の客を静かに待っているはずです。今はまだ美しいだけの木ですが、このまま作業を続ければ、いずれまた誰かが犠牲になるのでしょう。
扉を見つめたまま続きの言葉を失ってしまったジーニーを、少し強引に引っ張って扉から遠ざけながら、アランは話し始めました。
「桜って不思議だよな~。アブノーマリティじゃなくたって、皆を惹きつけて、愛されてて。すっごく手間がかかって面倒な木なのにさ~」
「……そうなのか?」
ジーニーの意識が自分の話に移ったのをみとめて、アランはもう一度笑いました。
この世間知らずの先輩は、見た目や実年齢よりずっと幼いところがあり、自分の知らない知識の話を聞くのが好きなのです。