床に広げたがらくたの群れをざっと見回し、ウェイはひとつ溜息をつきました。

腕輪やネックレスといった装飾品から、そこそこ値の張りそうなカトラリー、刃物や銃の弾丸まで、無節操に様々なものを。

これらは全て、ウェイがこの会社に来る前に『商品』として所持していたもので、私物として会社内に持ち込んだのです。

ウェイは、文字通り何でも売る商人として裏路地を渡り歩いていました。

飢えに苦しむ家族に食料を売ってやったこともあれば、自分の快楽のために殺しを楽しむ者に武器を与えたり、不幸を嘆いて絶望する子供に、良い気分になれる薬を売ったりもしました。

その品物が良いものか悪いものか、それを売ることで客が幸せになるか不幸になるか、そんなことはどうでも良かったのです。明日も生きていくだけのお金さえ貰えれば、それで良かったのでした。

仕入れの方法は、誰かから盗むか、その辺で拾うかの二通りだったので、なかなかボロい商売だったと言えるでしょう。

同僚に何かを売りつけて小遣い稼ぎをしようかと、商品の中から特に需要のありそうなものや価値のありそうなものを厳選していくつか持ち込んだのですが、こうして改めて確認してみると、ほとんどは売れずに残ったままでした。

事実、ここでの商売はあまり上手くいっていません。ウェイが持ち込んだ商品を購入した者は、今までに2人しかいないのです。

ひとりはあまり賢くなさそうな先輩の少女で、たしかアレックスという名前だったような気がします。裏路地のものが珍しかったらしく、十八番の口八丁で言いくるめたら簡単に買ってくれました。しかし上手くいったのはその最初の1度だけで、それ以降は彼女の同期のどちらかが監視役として付き添うようになってしまったので、彼女が何かを欲しがっても彼らに止められてしまうのです。

そしてもう1人は、同期の男性職員。彼はかなりの蒐集家で、ウェイの商品にも強く興味を持ってくれる数少ない客でした。ここへ持ち込んだものの中で売れたものを購入したのはほとんど彼です。

他の職員たちは、最初は興味を持ってくれても、徐々にウェイの胡散臭さに気づいて何も買わずに帰ってしまうか、そもそも最初からウェイの性根や悪評を知っていて、全く相手にしてくれないかのどちらか。

この場所で懐を肥やしたところで使い道は限られるので、本当はあまり意味がありません。ですが、裏路地で明日をも知れぬ生活を長く過ごしたウェイにとっては、お金はあればあるだけ良いものです。

何より、悪徳であるという自覚は持っていても、これだけ品物が残っていては商売人としてのプライドが多少なりとも傷つくのでした。

そうして、この品々を如何にして売り捌こうかと悩んでいたのです。

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